転ばし屋「ドラえもんの道具に憧れて、マジで転ばし屋になってしまった」

7

12019/01/28(月) 21:30:22.068ID:ID:pLcItEez0

第一話『転んだのは誰?』

―BAR―

男「あんたが……金さえ払えばどんな奴も転ばせるっていう転倒屋か?」

転ばし屋「転倒屋じゃない……“転ばし屋”だ」

転ばし屋「本来なら、“ころばし”は全て平仮名にすべきなんだろうが……」

転ばし屋「俺はしょせん模倣だからな。漢字を混ぜて“転ばし”にさせてもらっている」

男(なんの話だかさっぱり分からん……)

転ばし屋「立ち話もなんだ。あんたも腰かけてくれ」

男「あ、ああ……」




32019/01/28(月) 21:34:33.688ID:ID:pLcItEez0

男「仕事の話に入る前に、聞いておきたい」

転ばし屋「ん?」

男「人を転ばせるって……具体的にどうやって転ばせるんだ?」

転ばし屋「企業秘密だからあまり詳しくはいえんが、色々と方法はあるぞ」

転ばし屋「一番多いのは、殺傷力を抑えた改造銃で足を撃って転ばせる方法だな」

転ばし屋「オリジナルの“ころばし屋”も、拳銃を武器にしてるしな」

転ばし屋「だが、場合によってはロープ、油、氷などを使うこともある」

男「なるほど……臨機応変にやってるってわけか」

転ばし屋「自己紹介はこんなところでいいか? さっそく標的から聞かせてもらおう」


42019/01/28(月) 21:37:21.594ID:ID:pLcItEez0

男「標的は……こいつだ」サッ

男「俺はマラソン選手でな。こいつは俺のライバルといっていい存在だ」

男「こいつを……次のレースで転ばせて欲しい」

転ばし屋「理由は?」

男「次のオリンピック、代表選考は熾烈な争いになるのは間違いない」

男「今度のレースは、その行方を占うレースともいわれている」

男「だからここで、ライバルを転ばせて出鼻をくじき、代表を確実に勝ち取りたいんだ!」

転ばし屋「…………」

男「やってくれるか?」

転ばし屋「ああ、金さえもらえれば、な……」

転ばし屋「ただし、あんたがオリンピック代表になれるかまでは保証しないぞ」

男「分かってる。こいつさえ調子を崩してくれれば、俺は間違いなく代表になれる!」


52019/01/28(月) 21:41:03.403ID:ID:pLcItEez0

レース当日――

パァンッ!

ワァァァァ……!

実況『さぁ、ついに始まりました!』

実況『このマラソン大会は、オリンピック代表の行方を占うレースともいわれており』

実況『どの選手の表情も真剣そのもの! 絶対優勝するという気迫が伺えます!』

男「…………」タタタッ

ライバル「…………」タタタッ


62019/01/28(月) 21:44:40.355ID:ID:pLcItEez0

実況『レース中盤に差し掛かり、男選手とライバル選手がデッドヒートを繰り広げています!』

実況『どうやら今回のレース、優勝を争うのはこの二人になりそうだ!』

タタタタタッ

男(やはり、ライバルとの一騎打ちになるか……)

ライバル「はっ、はっ、はっ……」

男(こいつは後半からが強い)

男(俺がライバルに負ける時は、いつも30kmを過ぎたあたりからの競り合いで負けてた)

男(だが――)


72019/01/28(月) 21:45:13.064ID:ID:W8FioriFr

期待


82019/01/28(月) 21:45:56.994ID:ID:GTgRUbfi0

面白い


92019/01/28(月) 21:47:21.501ID:ID:pLcItEez0

35km地点――

タタタタタッ

男(ここだッ! このレース終盤の勝負どころに奴を配置しておいた!)

男(頼むぞ、転ばし屋!)

転ばし屋「…………」チャッ

転ばし屋(狙いは……左足のヒザ!)バシュッ


102019/01/28(月) 21:50:17.814ID:ID:pLcItEez0

ビシッ!

ライバル「――うっ!?」ガクンッ

ドサッ…

ワアァァァァァ……!

実況『あーっと、ライバル選手、まさかの転倒!』

実況『この終盤での転倒は非常に痛い! 果たして巻き返せるのでしょうか!?』

男(よくやった、転ばし屋!)


112019/01/28(月) 21:53:22.012ID:ID:pLcItEez0

実況『男選手、そのまま一位でゴールだァ~~~~~!』

ワアァァァァァ……!

男「やったぁ!!!」

男(このレースを制した勢いで、絶対代表になってみせる!)

転ばし屋「…………」




132019/01/28(月) 21:57:11.566ID:ID:pLcItEez0

ライバル「うっ、うっ、うっ……!」

監督「アクシデントは仕方ない。また次のレースで頑張ろう……」

男(あんなに泣いてる……)

記者「このたびは優勝おめでとうございます! 素晴らしい走りでした!」

男「あ、ありがとう……」

記者「これでオリンピック代表にうんと近づきましたね!」

男「え、ああ……そうですね……」

ワイワイ… ワイワイ… パシャパシャッ


142019/01/28(月) 21:59:37.165ID:ID:pLcItEez0

―自宅―

男「…………」スースー

男「うっ!」

男「うう……ううう……」

男「あああっ!!!」ガバッ

男「またあの夢か……!」

男「ライバルが転んだ瞬間が、泣いてる顔が、毎日のように夢に出てくる……!」


152019/01/28(月) 22:02:27.223ID:ID:pLcItEez0

男(あのレースの時、俺だって調子は悪くなかった)

男(転ばし屋に頼らなくても、勝てる見込みは十分あったのに……)

ライバル「おーい」

男「!」ハッ

ライバル「前のレースはこけちまったけど、今日のレースは負けないからな!」

男「あ、ああ……」

男(もうこいつの顔をまともに見れない……見れるわけがない……)

男(俺はスポーツマンとして取り返しのつかないことを――)


172019/01/28(月) 22:05:44.170ID:ID:pLcItEez0

やがて――

テレビ『スポーツニュースの時間です』

テレビ『本日、オリンピック男子マラソン代表が発表されました』

テレビ『まず選ばれたのは、悲運の転倒アクシデントから復活を遂げた、ライバル選手!』

テレビ『一方の男選手は、まさかの選考漏れ!』

テレビ『男選手は、ライバル選手の転倒事故があったレース以降、精彩を欠き……』


182019/01/28(月) 22:08:04.280ID:ID:pLcItEez0

テレビ『選考から漏れた男選手は、本日現役引退を表明し――』

ピッ プツッ…

転ばし屋「…………」

転ばし屋「どうやら、他人を転ばせたつもりが、自分が転んでしまったようだな……」

―終―


192019/01/28(月) 22:09:38.374ID:ID:W8FioriFr

なるほどなぁ


202019/01/28(月) 22:13:38.373ID:ID:pLcItEez0

第二話『転んでもただでは起きぬ』

―ダンス大会会場―

ズダダダン ズダダダン ズダダダン…

ワァァァァァ……!

ダンサー「ヒャッホーッ!」ビシッ

司会「決まったぁーっ! 見事なダンスを披露してくれました!」

司会「これは高得点が期待できそうです!」


212019/01/28(月) 22:17:44.625ID:ID:pLcItEez0

~回想~

―BAR―

富豪「標的は、私の息子です」

富豪「息子が大会でダンスをしている最中、最も盛り上がるところで転ばせて欲しいのです」

転ばし屋「理由を聞かせてもらえるか?」

富豪「息子にダンスを諦めさせるためです」

富豪「息子とは“今度の大会で優勝できなければ会社を継げ”と約束しました」

富豪「つまり、転ばせて息子の優勝を阻止して欲しいというわけです」

転ばし屋「なるほど……だが、転んでも優勝する可能性はあるぞ?」

富豪「今度の大会はレベルが高く、転倒したらまず優勝はありえません」

富豪「なので、転ばせてもらいさえすれば、息子の優勝はなくなります! どうかお願いします!」

転ばし屋「分かった、引き受けよう」


222019/01/28(月) 22:20:27.753ID:ID:pLcItEez0

―ダンス大会会場―

司会「さぁ、続いてのダンサーの登場です!」

息子「イエーイッ!」バッ

ワアァァァァァ……!

転ばし屋(この青年が……依頼人の息子――標的だな)

転ばし屋(下馬評では優勝候補ともいわれているし、ダンスの才能はホンモノのようだ)


232019/01/28(月) 22:23:32.614ID:ID:pLcItEez0

ズンチャカ ズンチャカ ズンチャカ…

息子「さあ、踊るよー!」スタタタンッ

息子「ヘイヘイヘ~イ!」スタタタンッ

スタタタンッ スタタタタンッ バッ スタタタタンッ

ワアァァァァァ……!

司会「ノリのいい、素晴らしいダンスを披露してくれています!」

転ばし屋「…………」チャッ


242019/01/28(月) 22:25:12.114ID:ID:pLcItEez0

息子「ハァッ!」スタタタタッ

転ばし屋(ダンスが最高潮の――今だ!)バシュッ

ビシッ!

息子「うあっ!?」ドサッ…

転ばし屋(よし……転んだ)


252019/01/28(月) 22:28:16.229ID:ID:pLcItEez0

息子「ハァ~イ!」グルグルグル

オオッ……!

観客A「すげえ! 転んだと思ったら、そのままダンスしてやがる!」

観客B「いや、これって元々そういうダンスだったんじゃね?」

観客A「あ、そういうことかぁ!」

転ばし屋「…………」


272019/01/28(月) 22:32:29.589ID:ID:pLcItEez0

しかし――

司会「優勝は……アフロ選手だぁっ!」

アフロ「ヤッホーッ! みんなサンキューッ!」

ワアァァァァァ……!

息子「……くっ!」

息子「親父……ご覧の通りだ。俺はダンスはきっぱりやめて、会社を継ぐよ……」

富豪「…………」

富豪「いや……」


282019/01/28(月) 22:35:02.528ID:ID:pLcItEez0

富豪「お前がダンス中、転んだ後の立て直し……見事だった。最後までよく踊り切った」

息子「えっ!」

富豪「もし、あのまま諦めてしまうようなら、約束通りダンスをやめてもらうところだったが」

富豪「今のお前なら、十分独り立ちできると分かった」

富豪「会社を継ぐ必要はない! プロダンサーになれ! それも世界一のな!」

息子「親父……!」

転ばし屋(なるほど、依頼人は息子に本当にプロダンサーを目指す気迫や根性があるのかどうか)

転ばし屋(見極めたかったというわけか)

―終―


292019/01/28(月) 22:40:14.782ID:ID:pLcItEez0

第三話『転ばし屋と女殺し屋』

標的「――ん?」ツルッ

標的「うわっ、うわっ、うわっ!?」ツルツルツルッ

標的「うわぁぁぁぁぁっ!!!」

スッテーンッ

転ばし屋(これでよし。さて、いつものバーに寄るか)




312019/01/28(月) 22:43:09.515ID:ID:pLcItEez0

―BAR―

転ばし屋「…………」モグモグ

女殺し屋「はぁい」

転ばし屋「久しぶりだな。景気はどうだ?」

女殺し屋「おかげさまで悪くないわ。って、なんでバナナなんか食べてるの?」

転ばし屋「体にいいからな」モグモグ

女殺し屋「せっかくのムードがブチ壊しだわ……」


322019/01/28(月) 22:45:56.953ID:ID:pLcItEez0

女殺し屋「あなた、いい加減“殺し屋”になればいいのに」

女殺し屋「転ばせるより殺す方がよっぽど簡単だし、あなたならすぐ一流になれるわよ」

転ばし屋「そのつもりはない」

転ばし屋「俺はあくまで転ばし屋……転ばせるのが仕事だ。殺しは趣味じゃない」

女殺し屋「頑固ねえ」


332019/01/28(月) 22:48:14.396ID:ID:pLcItEez0

女殺し屋「じゃあもし……私がこの場であなたを殺そうとしたらどうする?」

転ばし屋「…………」

女殺し屋「…………」

転ばし屋「お前を転ばせて逃げる」

女殺し屋「ふふっ……」

女殺し屋「あなたらしい答えだこと」

転ばし屋「そりゃどうも」

女殺し屋「さ、二人で飲みましょ。マスター、いつもの頼むわ」


342019/01/28(月) 22:48:46.686ID:ID:2ArcG7r5r

はよ


352019/01/28(月) 22:51:46.586ID:ID:pLcItEez0

女殺し屋「ふぅ、少し酔っ払っちゃった」

女殺し屋「星が綺麗な夜だし、ちょっと外歩かない?」

転ばし屋「ああ」

スタスタ…

女殺し屋「今、私は酔っ払ってるんだから、何かあったら守ってよね」

転ばし屋「プロの殺し屋を守る必要なんてないだろう」

女殺し屋「殺し屋だけど、私は女よ? 男女平等の時代とはいえ、男は女を守らなくっちゃ」

転ばし屋「そこらの男よりよっぽど強いくせに、よくいう……」


362019/01/28(月) 22:53:53.247ID:ID:pLcItEez0

暴漢「あ~……ムシャクシャする!」

転ばし屋「!」

暴漢「ムシャクシャしたら誰か殴りたくなってきた! ぶん殴ってやる!」

転ばし屋「なんだ、このジャイアンみたいな奴は……」

女殺し屋「さぁ、こういう時、転ばし屋さんはどうしてくれるのかしら?」

転ばし屋「それはもちろん――」

暴漢「オラァッ!」ブオンッ

転ばし屋「転ばせるだけだ」ポイッ

女殺し屋(何かを道に捨てた? あれは――)


382019/01/28(月) 22:56:46.054ID:ID:pLcItEez0

女殺し屋(バナナの皮!)

暴漢「わっ!?」ズルッ

暴漢「うぎゃあ!」スッテーンッ

暴漢「むぎゅう……」ガクッ

女殺し屋「なるほど、こういう時のために、バナナを食べてたのね」

転ばし屋「ああ、バナナの皮は優れた武器になる」

転ばし屋「もちろん、捨てた皮はちゃんと拾う」サッ

転ばし屋「お前も雇ったこの男に、ちゃんと治療費ぐらい払ってやれよ」

女殺し屋「あら、バレてたのね」

転ばし屋「バレないと思ってる方がどうかしてるだろ」


392019/01/28(月) 22:59:21.762ID:ID:pLcItEez0

女殺し屋「そういえば……」

女殺し屋「あなたが“転ばし屋”になったのは、ドラえもんに出てくる“ころばし屋”に憧れたからよね?」

転ばし屋「そうだ」

転ばし屋「俺と違い、たった10円で標的を三回も転ばせてくれる凄腕だ」

女殺し屋「面白そうね、今度ドラえもん読ませてくれない?」

転ばし屋「ころばし屋が出てくるのは、てんとう虫コミックスの13巻だ。今度といわず今貸してやろう」

女殺し屋「……いつも持ち歩いてるんだ」

転ばし屋「この巻は俺にとっての聖書(バイブル)だからな」

―終―


402019/01/28(月) 23:05:15.310ID:ID:pLcItEez0

第四話『転ばし屋はつらいよ』

―峠道―

転ばし屋(標的を転ばせるのは、この地点だったな)

転ばし屋「よーく写真を撮っておこう」パシャッパシャッパシャッ

転ばし屋「あと路面の状態もしっかり調べて……」

転ばし屋「交通量も確認しておかないと……」

転ばし屋「それと決行予定日の天候も調べて……」

…………

……


412019/01/28(月) 23:07:48.369ID:ID:pLcItEez0

―闇市場―

商人「でしたら、このオイルなんてどうです?」

転ばし屋「ちょっと触らせてくれ」

転ばし屋「おお」ヌルッヌルッ

転ばし屋「こりゃいい。ポリタンク一杯分購入しよう」

商人「毎度あり~!」


422019/01/28(月) 23:10:08.054ID:ID:pLcItEez0

―研究所―

転ばし屋「この地点で、猛スピードのバイクを転ばせたら運転者はどう転ぶ?」

学者「ふむ……」

学者「仮に100km/hとすると……運転者はバイクから放り出されてここに頭から激突するね」

転ばし屋「なるほど……」

転ばし屋(万が一にも間違いがあってはならない)

転ばし屋(専門家と打ち合わせ、綿密なシミュレーションを重ねないと……)


432019/01/28(月) 23:12:39.193ID:ID:pLcItEez0

―峠道―

転ばし屋(だいたいデータは揃った)

転ばし屋(オイルはこの地点に撒くことにして……)

転ばし屋(このあたりに葉っぱで作ったクッションを置いておこう)

転ばし屋(もちろん、俺もバイクを走らせて、実際に実験した方がいいだろうな)


442019/01/28(月) 23:13:14.902ID:ID:+lEUHDec0

面白い


452019/01/28(月) 23:16:19.591ID:ID:pLcItEez0

……

ブォンブォンブォン! ブォンブォンブォン!

若者「ヒャッホーッ!」

若者「この峠でバイク走らせてると、ホントスカッとするぜー!」

若者「親父は危ない運転やめろなんてうるせえけど……」

若者「バイクの天才であるこの俺が事故るわけないっつーの!」

ブオオオオオオオオッ!!!


462019/01/28(月) 23:18:09.101ID:ID:pLcItEez0

ズルッ!

若者「わっ!?」ガクンッ

若者「わあああああああああっ!?」

若者(あ……周囲がゆっくり見える……)

若者(もしかして、これが走馬灯ってやつか……?)

若者(そうか俺、死ぬんだな……)




472019/01/28(月) 23:22:03.250ID:ID:pLcItEez0

ドザァッ!

若者「…………!?」

若者「俺……生きてる……?」

若者「た、助かったぁ……」

若者(そうか、ちょうどいい具合に葉っぱがクッションになって助かったんだ……)

若者(もうこんな怖い思いは懲り懲りだ……! 反省しよう……!)

…………

……


482019/01/28(月) 23:24:22.244ID:ID:pLcItEez0

―BAR―

依頼人「いやぁ~、今日は改めてお礼にうかがいました!」

依頼人「おかげで息子がバイクでの暴走行為をやめました! ありがとうございます!」

転ばし屋「うまくいってなによりだ」

依頼人「それにしても、さすがは転ばし屋ですなぁ!」

依頼人「“息子を傷つけないよう転ばせる”なんて依頼をいともたやすくこなしてくれるなんて!」

転ばし屋(いともたやすく、ね……)

―終―


492019/01/28(月) 23:28:06.507ID:ID:RdeV2LdUr

狙って転ばすのって実際大変だよね


502019/01/28(月) 23:30:27.401ID:ID:pLcItEez0

第五話『最も下らない依頼』

―BAR―

転ばし屋「…………」モグモグ

女殺し屋「はぁい」

転ばし屋「なにか用か?」

女殺し屋「ううん、今日は軽く雑談でもしようかと思って」

転ばし屋「雑談、か……」

女殺し屋「あなたが今までに受けた依頼の中で、最も下らない依頼ってなに?」

転ばし屋「下らない依頼か……」

転ばし屋「まあ、アレだろうな」

女殺し屋「アレって?」

転ばし屋「お前になら話してもいいだろう。あれは何年か前……」


512019/01/28(月) 23:33:03.173ID:ID:pLcItEez0

~回想~

ブス「私を転ばせてちょうだい!」

転ばし屋「……分かった」

ブス「思いっきり頼むわよ! 手加減抜きで! でなきゃ意味ないから!」

転ばし屋「ああ、そうさせてもらう」

ブス「じゃあ……当日は頼んだわよ!」

転ばし屋「任せてくれ」


522019/01/28(月) 23:37:31.073ID:ID:pLcItEez0

当日――

ブス「ついにアメリカ大陸を発見したわぁ~~~~~!!!」

ブス(さあ、転ばせてちょうだいな!)サッ

転ばし屋(合図……今だ!)バシュッ

ビシッ!

ブス「あらぁぁぁぁぁっ!」

ドザァッ!


532019/01/28(月) 23:39:24.834ID:ID:pLcItEez0

ドヨドヨ…

ブス「いたたたたた……!」

ブス「これがホントの転んだブス!」

どっ!!!

アハハハハ… ワハハハハ…

転ばし屋「……ぷっ」

転ばし屋(俺としたことが……ちょっと笑ってしまった)


552019/01/28(月) 23:41:05.094ID:ID:RdeV2LdUr

コロンブスw


562019/01/28(月) 23:43:24.308ID:ID:pLcItEez0

―BAR―

女殺し屋「アハハ……たしかに下らないわね」

女殺し屋「で、その彼女はどうなったの? なんでそんなことしたの?」

転ばし屋「…………」サッ

女殺し屋「スマホ?」

転ばし屋「この番組を見てくれ」


572019/01/28(月) 23:46:37.861ID:ID:pLcItEez0

スマホ『本日のゲストは今大人気の“転んブス”!』

スマホ『今日も私のギャグでみんなを笑い転ばせてあげるわぁ~ん!』

スマホ『アハハハハ…ワハハハハ…』

転ばし屋「実は彼女を転ばせたのは、お笑い芸人のオーディションでのことだったんだ」

転ばし屋「今はこの通り、立派な芸人になってるよ」

女殺し屋「あら、すごい!」

―終―


582019/01/28(月) 23:54:24.329ID:ID:pLcItEez0

第六話『転ばし屋vs女殺し屋』

―BAR―

女殺し屋「はぁい」

転ばし屋「またあんたか。このところよく会うな。今日も雑談でもしにきたのか?」

女殺し屋「ううん……今日はとっても大事な用事があるの」

転ばし屋「嘘ではないようだな……で、いったいどんな?」

女殺し屋「あなたを殺しに来たの」


592019/01/28(月) 23:58:40.248ID:ID:pLcItEez0

転ばし屋「……どういうことだ?」

女殺し屋「詳しくはいえないけど、あなたに転ばされて不利益があった人からの依頼でね」

女殺し屋「今日ここで死んでもらうわ」

転ばし屋「…………」

女殺し屋「さあ、どうする?」

転ばし屋「前にいったとおりだ。転ばせて、逃げる」

女殺し屋「いうのは簡単だけど、そう上手くいくかしらね?」


602019/01/29(火) 00:02:16.916ID:ID:kBPngR6k0

女殺し屋「…………」

転ばし屋「…………」

女殺し屋(拳銃を――)チャッ

転ばし屋(足払いで――)ババッ

バシィッ!

女殺し屋「きゃあっ!」ドザァッ


612019/01/29(火) 00:04:49.982ID:ID:kBPngR6k0

女殺し屋「いたた……」

女殺し屋「悔しいけど、私の負けね……」

女殺し屋「私が拳銃を抜いても迷いなく転ばしに来るなんて……あなた、銃が怖くないの?」

転ばし屋「撃つ気のない銃は怖くないさ」

転ばし屋「お前が撃つ気だったら、今頃俺の額か胸の風通しがよくなってたかもな」

女殺し屋「あーあ、またお見通しだったってわけね」


622019/01/29(火) 00:07:33.224ID:ID:kBPngR6k0

転ばし屋「で、本当の用件は?」

女殺し屋「これ、返しに来たの」

転ばし屋「ドラえもんの13巻……」

女殺し屋「うん、ずっと借りっぱなしだったでしょ? バイブルなのにごめんなさい」

転ばし屋「いや、かまわないさ。もう何冊か持ってるし」

女殺し屋「アハハ、保存用とか観賞用ってやつ?」


632019/01/29(火) 00:11:51.171ID:ID:kBPngR6k0

女殺し屋「ところで私、ドラえもんにすっかりハマっちゃって!」

女殺し屋「その巻以外の巻も全部買ったし、大長編やアニメも見たりしてるの!」

転ばし屋「ほう?」

女殺し屋「ちなみに私が一番好きな道具は“絵本入り込み靴”かしら」

転ばし屋(ちょっと意外……)

女殺し屋「今夜は大いにドラえもんを語りましょ! それが今日の用事よ!」

転ばし屋「ああ、いいぞ」

転ばし屋(やれやれ、今夜は長い夜になりそうだ……)

―終―


642019/01/29(火) 00:16:13.175ID:ID:kBPngR6k0

最終話『転ばし屋が転んだ』

―BAR―

青年「デート中、彼女が転んだところを助けるというシチュエーションをやりたいんです」

青年「公園で彼女を転ばせて下さい!」

転ばし屋「分かった、引き受けよう」

青年「ありがとうございます!」

青年「デートは次の日曜ですので、どうかお願いしますね!」

転ばし屋(なかなか初々しい依頼だな……好感が持てる)


652019/01/29(火) 00:19:09.653ID:ID:kBPngR6k0

―公園―

転ばし屋(依頼人と標的がデートをしている……)

転ばし屋(今だ!)バシュッ

ビシッ!

女「きゃっ!」ドテッ

青年「あっ、大丈夫かい!?」サッ

シーン…

女「…………」

青年「あ、あれ……?」


672019/01/29(火) 00:22:29.531ID:ID:kBPngR6k0

ザワザワ… ザワザワ…

「転んだまま動かないぞ?」 「どしたどした?」 「大丈夫か!?」

青年「ああ……彼女が動かない!」

青年「まさか、転んだ時に打ちどころが悪くて……!?」

転ばし屋「…………!」

転ばし屋(そんな……転ばせるはずが、殺してしまった……!?)

転ばし屋(転ばし屋であるこの俺が……)


682019/01/29(火) 00:25:39.667ID:ID:kBPngR6k0

―BAR―

女殺し屋「はぁい」

転ばし屋「…………」

女殺し屋「?」

転ばし屋「ふぅ……」

女殺し屋「あら、珍しい。ため息なんてついて。どうしたの?」

転ばし屋「俺は……転ばし屋だというのに、人を殺してしまった」

女殺し屋「え……! ど、どういうことよ!」

転ばし屋「実は――」


692019/01/29(火) 00:29:32.052ID:ID:kBPngR6k0

転ばし屋「――というわけだ。そのまま依頼人の恋人は帰らぬ人になってしまった」

転ばし屋「俺としたことが……取り返しのつかないしくじりを……」

女殺し屋「…………」

女殺し屋「ねえ、その死んじゃった女性の葬儀ってどうなったの?」

転ばし屋「明日にでも開かれるはずだが……」

女殺し屋「だったら私、ちょっとそこに行ってくるわ」

転ばし屋「え? どうして?」

女殺し屋「なんとなーく、臭うのよね」

女殺し屋「人の死を無数に見てきた私なら、なにか違う事実が分かるかもしれないわ」

転ばし屋「そんなものがあるとは思えないが……よろしく頼む」


702019/01/29(火) 00:32:01.775ID:ID:kBPngR6k0

―葬儀場―

女殺し屋「私、生前彼女と親しくしていた者です」

遺族「おおっ、そうなのですか」

女殺し屋「一目だけでも、ご遺体を拝見させていただいてもよろしいですか?」

遺族「どうぞ……ぜひご覧になって下さい」

女殺し屋「すみません」


712019/01/29(火) 00:34:19.365ID:ID:kBPngR6k0

女殺し屋(これが彼女の遺体ね……)

女殺し屋「…………」ハッ

女殺し屋「こ、これは……!」

遺族「どうかしましたか?」

女殺し屋「いえ……何でもありません。どうもありがとうございました」

遺族「こちらこそ」

女殺し屋(すぐに転ばし屋に知らせないと!)


722019/01/29(火) 00:38:12.209ID:ID:kBPngR6k0

―BAR―

転ばし屋「首筋に針で刺されたような跡が……!?」

女殺し屋「ええ、きっと針に猛毒でも塗ってあって、それで死んじゃったのよ」

女殺し屋「私でやっと気づけたぐらいだから、普通の人じゃまず分からない」

女殺し屋「しかも、大勢が彼女が派手に転んだところを目撃してるから」

女殺し屋「転んで打ちどころが悪かった事故死、で処理されちゃったんでしょうね」

転ばし屋「なんということだ……」

女殺し屋「それと、あなたに依頼した青年、実は彼女と別れたがってたらしいわ」

女殺し屋「だけど、なかなか別れられないから――」

転ばし屋「俺を使って、事故死に見せかけて殺したってわけか……」

女殺し屋「うん……そういうこと」


732019/01/29(火) 00:41:17.969ID:ID:kBPngR6k0

転ばし屋「俺としたことが……まんまと利用されてしまったな」

女殺し屋「……どうするの?」

転ばし屋「もちろん、このままで済ませるわけにはいかない」

転ばし屋「俺にだって、転ばし屋としてのプライドはあるからな」

女殺し屋「手伝おうか?」

転ばし屋「いや……ここから先は俺一人でやらせてくれ」

女殺し屋「後始末が済んだら、またここで会いましょ」

転ばし屋「ああ、世話になった」

女殺し屋「ドラえもん貸してくれたお礼よ。気にしないで」


742019/01/29(火) 00:46:18.367ID:ID:kBPngR6k0

―夜道―

青年(フフフ、転ばし屋のおかげで、あのしつこいバカ女を始末することができた)

青年(転ばし屋なんてギャグみたいな職業でも、使い道はあるってことだな――)

ズルッ

青年「うおあっ!?」ズデンッ

青年「いてて……! なんでこんなに滑るんだ……!?」

転ばし屋「…………」ザッ

青年「お、お前は!?」

転ばし屋「お前がやったことはもう分かっている。ちょっと付き合ってもらおうか」


752019/01/29(火) 00:49:14.814ID:ID:kBPngR6k0

―倉庫―

青年「ぐっ!」ドサッ

青年「な、なんだよ、俺をどうする気だよ! 殺すつもりか!?」

転ばし屋「いや、殺すつもりはない」

青年「な、なんだこりゃ!?」ヌルヌルッ

転ばし屋「特殊なオイルだ。お前はもう、ずっと転び続けるしかない」

青年「な、なんだと……!」グッ

スッテンッ ズダンッ ビタンッ

青年(立てない……!)ヌルヌル

転ばし屋「ここから出たければ、今すぐ警察に電話して“真相”を話せ」

青年「だ、誰が!」ズルッ

青年「うおあっ!」ドタッ

転ばし屋「なら、お前は転び続けるだけだ」


762019/01/29(火) 00:49:57.216ID:ID:Vx/g8iXxr

貸してて良かったドラえもん


772019/01/29(火) 00:52:22.193ID:ID:kBPngR6k0

青年(腹減った……)

転ばし屋「食事だ、食え」コトッ

青年「…………?」

青年「メシ、食わせてくれるの?」

転ばし屋「俺はお前を死なせるつもりはないからな。当然餓死もさせない」

転ばし屋「ただ、ずーっとずーっと、転ばし続けるだけだ」

青年「……ひっ!」


782019/01/29(火) 00:55:46.473ID:ID:kBPngR6k0

青年「うひゃあっ!」ドテンッ

青年(た、立てない……!)

青年「わわぁ!」ドテッ

青年「ハァ、ハァ、ハァ……」

転ばし屋「…………」

青年(なんて目だ……!)

青年(こいつは本当にただ俺を転ばし続けるだけのつもりなんだ……!)

青年(俺が全てを明らかにしない限り、ずうっと……)


792019/01/29(火) 00:59:30.386ID:ID:kBPngR6k0

……

青年「ハァ、ハァ、ハァ……」

転ばし屋「…………」

青年「す、すみませんでした……」

転ばし屋「…………」

青年「許して下さいっ! 警察には自首しますからっ……!」

青年「だから、ここから出して下さいっ!」

転ばし屋「なら、このお前のスマホから警察に連絡しろ」ポイッ

転ばし屋「ただし、余計なことをいったら、今度は永久に転び続けることになるぞ」

青年「は、はいぃっ!」

青年「もしもし、警察ですか……。実は女性が転倒死した事故についてお話が……!」

…………

……


802019/01/29(火) 00:59:42.465ID:ID:f5kxxEa40

昔の短編漫画感ある


812019/01/29(火) 01:02:28.610ID:ID:kBPngR6k0

―BAR―

転ばし屋「おかげさまで、奴は逮捕されたよ。俺の気も幾分かは晴れた」

女殺し屋「ふふっ、お疲れ様」

転ばし屋「今回は助けられたよ、本当にありがとう」

転ばし屋「しかし……こうもまんまとしてやられるとは……本当に不覚だった」

転ばし屋「これも全て、人を転ばせるという行為を甘く見ていた結果だ」

転ばし屋「俺はもう、“転ばし屋”を廃業すべきなのかもしれないな」

転ばし屋「いっそ、“殺し屋”に――」

女殺し屋「ちょっとなにいってんの!」

女殺し屋「今まで散々人を転ばせた男が、一度転んだくらいでへこたれないでよ!」


822019/01/29(火) 01:04:16.527ID:ID:KzbEyyvM0

転ばし屋か殺し屋かの2択とはすごい人生だ


842019/01/29(火) 01:07:18.058ID:ID:kBPngR6k0

女殺し屋「人生七転び八起きっていうじゃない! 転んだら立ち上がればいいのよ!」

転ばし屋「……そうだな」

転ばし屋「俺はこれからも、人を転ばし続けるよ。憧れの“ころばし屋”のように!」

女殺し屋「そうそう、その意気!」

女殺し屋「それじゃ、これからも転んでも起き上がれるように、乾杯!」

転ばし屋「乾杯」

カチンッ

―終―


852019/01/29(火) 01:07:53.638ID:ID:kBPngR6k0

これで完結となります
ありがとうございました


862019/01/29(火) 01:08:22.965ID:ID:KzbEyyvM0



872019/01/29(火) 01:09:34.745ID:ID:HcsKAZSbx

すごかったな
乙!


882019/01/29(火) 01:10:31.332ID:ID:Vx/g8iXxr


本屋でドラえもん13巻買うわ


892019/01/29(火) 01:13:33.386ID:ID:/iz0dX5D0

多分いろいろ書いてるよね
構成がきれいでわかりやすいしテンポいいから好きだわ


902019/01/29(火) 01:13:44.430ID:ID:6gHsXalo0






ホームに戻る
7